こちらの記事では、ナノファイバーを知るための第一歩となる基礎知識について、簡単にご紹介します!
「1nm(1ナノメートル)」は1mの10億分の1の長さです。そして、ナノファイバー は「直径が1nmから100nm、長さが直径の100倍以上の繊維状物質」と定義されています。わかりやすく説明すると、毛髪の百分の一から千分の一の太さを持つ「超極細の繊維」です。
「繊維」であるナノファイバーですが、ナノサイズになることで起こる特性から、IT、バイオ、環境・エネルギー分野等における、日本の未来を支える「先端材料」として研究・開発されています。
ポリプロピレンやポリエチレンテレフタラートなどからなる「高分子ナノファイバー」、セルロースや腱やDNAなどの「バイオナノファイバー」、カーボンナノチューブなどの「カーボンナノファイバー」、金属からなる「ナノワイヤ」など、ナノファイバーと一括りにしても様々な種類があり、種類に応じてそれぞれの特性を持っています。
ナノファイバーには代表的な性質が3つあります。
繊維化して細くすればするほど、単位重量当たりの表面積は飛躍的に大きくなり、さらに原子やイオン、分子の間に働くファンデルワールス力によって強い引力が発生します。 このことから、「分子認識性」「吸着特性」等に優れた性質を持つようになるので、バイオフィルター、センサー、燃料電池電極材などへの利用が期待されます。
ナノサイズの太さであるナノファイバーだからこそ発生する効果です。「流体力学特性」、「光学特性」等が生み出されます。 これにより、圧力損失が低いのにサブミクロン粒子を完全に補足できる超高性能フィルターが作られます。また、ナノファイバーの直径が光の波長より短いことから光の乱反射が減少し、透明度の高い繊維が作り出されるので、光透過性の優れた電子ペーパーなどへの利用が期待されます。
※サブミクロン粒子は、1μm以下、0.1μmまでの粒子の名称です
高分子鎖がまっすぐ並ぶことから生じる効果です。「電気的特性」、「力学的特性」、「熱的特性」等が生み出されます。 導電性の原子や分子を規則正しく配列することで、非常に導電性に優れた繊維ができ、モバイル燃料電池などへの利用が期待されます。 また、高分子鎖が真っ直ぐなことから非常に高強度になり、また構造が緻密になることから大幅に耐熱性が向上します。 「軽・薄・短・小」が必要な分野での高機能複合材料への利用が期待されます。
ウィルスよりも細かいナノサイズのフィルターを利用した「ナノファイバーマスク」や、従来のものに比べ油の吸収速度が早く保持量が多いナノファイバーの「油吸着剤」は、当社で製品化されています。また業界全体では、ナノファイバーを活用した「人工オアシス」や「強化コンクリート」の実現に向けて研究が進められています。
2001年3月に、ナノテクノロジーは「バイオサイエンス」「IT、「環境・エネルギー」 と共に重点研究の戦略目標とすることが、総合科学会議で決定されました。2003年には経済活性化の具体的成果を求めて「産業発掘戦略」が立てられ、その中でナノテクノロジーは「ネットワーク・ナノデバイス産業」「ナノバイオニック産業」「ナノ環境エネルギー産業」「革新的材料産業」「ナノ計測・加工産業」 に関連する基盤技術として位置づけられ、具体的な成果が求められるようになりました。
2000年頃から世界中で材料革命を起こすと言われ、アメリカ・ドイツ・韓国などが巨額の国家プロジェクトとしてナノファイバーの量産技術競争が始まりましたが、約20年を費やしても革命的な生産技術を確立するには至りません。そんな中、2006年4月~2011年3月の5年に渡って東京工業大学で実施された国家プロジェクト「先端機能発現型新構造繊維部材基盤技術の開発プロジェクト(通称 ナノファイバープロジェクト)」によって、安全かつ大量生成できる技術が完成します。
その技術をもとに設立されたのが、当社が業務提携する株式会社Zettaであり、2014年には更なる飛躍を遂げたZetta-Spinning法(Zs法)という新たな紡糸法の開発に成功。現在の体制へと繋がっていきます。
谷岡 明彦
特定非営利活動法人 ナノファイバー学会会長 東京工業大学 名誉教授・工学博士 【NEDO】先端機能発現型新構造繊維部材基盤技術の開発事業プロジェクトリーダー(総事業費56.35億円) 株式会社Zetta取締役
いかがでしたでしょうか。本記事では、ナノファイバーについての基礎的な知識を5分でわかるボリュームにして簡単解説しました!まだまだナノファイバーについて知りたい方は、ぜひ当社の他の記事もご覧になってください!